娘を悩ませる「不思議の国のアリス症候群」が和らいだキッカケ。

掲載日:2016年10月21日

b335b392f9b747d30606cc4f3291f2fd_s「不思議の国のアリス症候群」ってご存知ですか?
ルイスキャロルの作品「不思議の国のアリス」にちなんで名づけられた
病名で、世界中にその症状を訴える人がいるようです。
娘は約2年前から、この症状に悩まされ
家族も悩んできました。
そんな症状に悩む娘を安心させる、ある出来事があったのです。


不思議の国のアリス症候群とは?

精神科医のJohn Toddが名づけた症候群で
周囲の物や自分が大きくなったり小さくなったり、
時間の流れが普段と異なって感じたり
周囲のモノが擬人化され話しかけてくるなど
まさにアリスの世界を体験するような症状が現れます。

娘の症状

娘は4歳ごろから症状が始まり、現在6歳です。
高熱が出たときは必ずこの症状が訪れます。
その他、夜なかなか眠れない時や
逆に起きてすぐなどに感じることがあるようです。
頻度はそれほど高くないのですが
本人が強い恐怖を感じているため、一度熱で病院を受診する際に
総合病院の小児科で相談しました。
アリス症候群はその多くは大人になるまでに自然と治っていくことが
多いらしく経過観察になりました。
また娘はちょうど症状が始まる前にEBウィルスによる高熱が原因で
入院したことがあり
実はアリス症候群とEBウィルスはなんらかの関係があるのではないか
と言われているがまだよくわかっていないとのことでした。

具体的な症状はその都度異なりますが、
そのほとんどが恐怖体験です。

・時計がすごく早く進むのに、自分は水の中にいるみたいに
 ゆっくりしか動けない
・みんなが聞き取れないくらい早口でしゃべっている
・薬が手の上に乗せられないくらい大きい
・蛍光灯の周りを何かがグルグル回っている
・空は晴れているのに雷の音が近づいてくる
・部屋が狭くなって(自分が大きくなって)苦しい

など、どれもこれも信じられない内容ばかりです。
でももちろん実際には時計が早く動いていないし、薬もいつものサイズです。
でも娘には見え、聞こえているので
「怖い怖い」とパニックになって泣きじゃくります。

でも、この話を聞いたときに
私は「娘がおかしくなった!」とか「心霊現象なんじゃないか」などと
パニックになったり
「嘘をつくのはやめなさい」と怒ることはありませんでした。
なぜならば、この症状を知っていたからです。

大学の友人の体験

以前大学時代に友人と「なぜ心理学を勉強するようになったか」と雑談した時
友人のひとりが
「子どものときに、寝る前にいつも恐怖体験をしていたが
親は信じてくれなかった。どんなに訴えても嘘をつくなと言われたり
笑われたりした。自分が感じていることを、他人は感じないのが不思議だった。
それが心理学を学ぶきっかけだった」
と話していました。

その「恐怖体験」の内容が今の娘の訴える内容と酷似していたのです。
時計が早く進む、早口で話しているように聞こえる、
自分がスプーンの上にのるほど小さくなってしまう・・・

私はその友人の体験した世界に強い興味を持って
詳細に覚えていました。
なので娘が自分の体験を繰り返し訴えたときに「ああ、同じだ」とピンときたのです。

娘を安心させた言葉
ある時娘が「私あたまが変なのかなあ」と泣き始めたことがありました。
「もっと変になって、(幻覚の世界から)出られなくなったら
どうしよう」と。

私は「ママのお友達に、〇〇ちゃんと全くおなじように感じていた子が
いるんだけど、だんだん治っていったんだって」と伝えると
娘は突然パアッと顔が明るくなり
「本当に!?私みたいな人いるの??」と。
そして「その人とお話してみたい」というのです。

お互いにしかわからない、気持ちの共有

私は忙しい友人に頼み、時間を作ってもらい電話をしました。
友人はスクールカウンセラーになっていましたので
とても上手に対応してくれ、自分の経験を娘に話してくれました。
また娘の不安を聞いてくれました。
娘は安心したような、同じ体験をした仲間を見つけて
嬉しいような表情で話していました。

「その時は怖いけど、終わったらそのことを日記に書いたり
絵にかいたらすごいものが書けるよ。世界のすごい人も
この病気だったかもしれない人がたくさんいるって教えてくれた」

「ほんとうに同じだったの、それで話してたらおかしくなってきて笑っちゃった」

と。

「自分だけが怖い世界に取り残されている」感覚は本人にしか
わかりません。その孤独感がより恐怖感を引き出しているのでしょう。
娘の場合、「同じ症状の人がいる」と思っただけで
少し症状が和らいでいるような気がします。

まだ、経過観察の状態で
たまに「症状を思い出し、恐怖する」いわゆる
フラッシュバックに悩まされますが
「頭がおかしくなってしまった」というような恐怖はなくなってきたように感じます。

もし、自分の子が同じような症状を訴えたとき
嘘をついていると怒ったり、馬鹿にして笑ったりしないであげてください。
こういった症状を持つ子どもたちがいることを知っていただけると
幸いです。