「Today」を読んで思い出した「今日一日何もやってない」ツラさ

掲載日:2017年01月16日

639706c1ba6fe0bbf040609011f25f11_s先日1歳児を育児中の友人が悩んでいると知り久々に連絡をとってみた。
聞けば1歳児のAちゃんはよく寝て、よく食べ、よく笑い、人懐っこい
とても育てやすい子に育っているそうだ。
なんと寝かしつけは5分で朝まで寝てくれるそう!
「じゃあ、なんで悩んでいるんだろう・・・」
一瞬そう思ってしまった自分がいた。

たった数年前なのに気持ちを忘れてしまっていることに気が付いて恥ずかしくなった。

「一日何もしていない、役に立っていないって思うとつらい」
「予定はないのに、家事も全部中途半端で自分のだらしなさとかやる気のなさに嫌気がさすの」
「仕事をしていた時は忙しかったけど、いま(育児中)の方がなぜか悩んでいる。でも甘えてるのかな」

そう言われてやっと思い出したのだ。
「一日何もやっていない」「自分は役立たず」と思うつらさを。

Todayを思い出して、メールに送った。
知っている人も多いと思うけどこんな詩である。


『今日』 (ニュージーランドの詩・伊藤比呂美 訳)

今日、わたしはお皿を洗わなかった
ベッドはぐちゃぐちゃ
浸けといたおむつは
だんだんくさくなってきた
きのうこぼした食べかすが
床の上からわたしを見ている
窓ガラスはよごれすぎてアートみたい
雨が降るまでこのままだとおもう

人に見られたら
なんていわれるか
ひどいねえとか、だらしないとか
今日一日、何をしてたの? とか

わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた
わたしは、この子が泣きやむまで、ずっとだっこしていた
わたしは、この子とかくれんぼした。
わたしは、この子のためにおもちゃを鳴らした、それはきゅうっと鳴った
わたしは、ぶらんこをゆすり、歌をうたった
わたしは、この子に、していいこととわるいことを、教えた

ほんとにいったい一日何をしていたのかな
たいしたことはしなかったね、たぶん、それはほんと
でもこう考えれば、いいんじゃない?

今日一日、わたしは
澄んだ目をした、髪のふわふわな、この子のために
すごく大切なことをしていたんだって

そしてもし、そっちのほうがほんとなら、
わたしはちゃーんとやったわけだ

(以下原文)
Today

Today I left some dishes dirty.
The bed got made about two-thirty.
The nappies soaked a little longer.
The odour got a little stronger.
The crumbs I spilt the day before
Were staring at me from the floor.
The art streaks on those window panes
Will still be there next time it rains.
For shame,oh lazy one you say
And “just what did you do today?”.

I nursed a baby while she slept.
I held a toddler while he wept.
I played a game of hide’n’seek.
I squeezed a toy so it would squeak,
I pushed a swing,I sang a song,
I taught a child what’s right and wrong.

What did I do this whole day though?
Not much that shows,I guess it’s true.
Unless you think that what I’ve done
Might be important to someone
With bright blue eyes-soft blond hair,
If that is true,I’ve done my share.


これはニュージーランドの詠み人しらずの詩を
伊藤比呂美さんが訳したもの。

「なんなの?この詩 私が書いたのかな?!」と泣きながら電話をしてくれた友人。
そう、この詩に共感する母親はとても多いはずだ。
そして日本だけでなく、世界の母親が通る道なのかもしれない。

ゆるく長く、そして毎日拘束されている感覚は育児中の本人しかわからない。
子どもがかわいくないのではなく心の逃げ道がない。
自分の時間があるようにみえて実は1分もないんだから。

やらなかった、できなかった事に焦点を当ててしまうと
「自分は育児に向いてないんじゃないか」という気持ちが湧いてくる。
「ほかの家はちゃんと部屋もきれい、離乳食も全部手作りで、洋服まで作っている・・・・」
そんな他の家の良いところしかみえなくなってしまう。

でも、他の家も大体同じ。

大丈夫大丈夫
一緒にお昼寝たっぷりしていいし
パウチの離乳食の日があってもいい。
お風呂に入れない日だってみんなある。
誰もあなたを責めないし、
もし責めるような目があったら、そんな目の方向じゃなく
自分の子どもの目を見つめてみて。
本当に素晴らしい役割をもってるんだから。

そして私もすっかり忘れていたその気持ちをたまに思い出さないとと思った。
Today 本当に素敵な詩!